これまでこちらでは、松島で観光スポットをめぐっていただく合間に立ち寄っていただけるお店を中心にご紹介してきました。そのなかには、ザ・ミュージアムMATSUSHIMAのカフェや伊達かふぇなど、観光スポットそのものに付属するお店もあります。
今回お伺いした観瀾亭は、これらともちょっと違います。宮城県指定の文化財である建造物のなかで、伊達藩歴代藩主も愛でた眺望を楽しみながらちょっと贅沢なひとときを過ごしていただける施設です。
今年(2017年)の夏は宮城を含め多くの地域で雨の日が続きましたが、9月に入って晴天の日もだいぶ増えました。
取材日も気持ちよく晴れていました。青空に雲が浮かんでいます。
こちらの写真は多くの方が観光のスタート地点にされる、観光桟橋前の松島海岸レストハウスです。観瀾亭は、こちらのすぐ西側になります。
松島海岸レストハウスの前から海に向かって、遊覧船が発着する観光桟橋が伸びています。観光桟橋を進んで陸側を振り返ると、海岸まで迫っている高台の上に建っている日本建築が見えます。
こちらが観瀾亭です。
観瀾亭の前は遊歩道になっているのですが、取材時点では残念ながら補修中で通行禁止でした(平成26年の初夏にこの遊歩道を取材した記事を、こちらに掲載しています)。
松島海岸レストハウスの面している国道45号線に出て西側を向くと、道が大きく右に曲がっている角のところが観瀾亭になります(パレス松洲からは送迎いたしますので、お申し付けください)。
高台の下から観瀾亭を見上げると、写真のような感じです。
豊臣秀吉は関白の座を退いたあと、聚楽第を離れて伏見城に隠居しました。この建物は、その伏見城にあった建造物を伊達政宗公が賜り、江戸の伊達屋敷に移築していたものです。
仙台藩二代藩主 忠宗公によって、この建物はこの場所に移されました。
秀吉の居城であった当時の伏見城の建造物は、そのほとんどが関ヶ原の戦いの前哨戦において石田三成勢によって焼かれてしまっています(そののち、徳川家康による再建を経て廃城、という運命をたどります)。
移築をくり返しながら戦火をまぬがれた観瀾亭は、歴史的な意味でも貴重な建物であるといえるでしょう(火災による焼失にともない再建されたものだ、との説もあるようです)。
門をくぐると階段があり、観瀾亭へと続いています。
観瀾亭は伊達家代々の「月見御殿」として知られていますが、今回お話を伺った松島町産業観光課の渡邉奏子主事によると、この場所は観瀾亭が移築される前から「月見崎」と呼ばれており、同様の目的の建物もあった、とのこと。
松島は遠い昔から月の名所だった、ということですね。
観瀾亭の縁側は、海に向かって大きく開いています。
宮城県の桃山建築としては、国宝である仙台市の大崎八幡宮が有名です。とはいえ、おなじ桃山時代の建築物でも、豪壮・絢爛な大崎八幡宮と違って、観瀾亭の建物のつくりは簡素で端正です。
同時代の文化でも、どちらかというと侘び茶の美意識に影響されているような印象を受けます。
ただ、内部は違います。
身分の高いひとのための「御座の間」は金箔に囲まれ、伊達家お抱えの狩野派の画家の手になるといわれる極彩色の絵画に彩られています。
掲げられた額のうち、「雨奇晴好」の文字はこの建物を命名した仙台藩五代藩主吉村公の、「観瀾」の文字は七代藩主重村公の手になるもの。
(こちらの部屋は撮影禁止です。特別に許可をいただいて撮影しました)
「瀾」の文字は、波が立つことを意味します。
その名前のとおり、観瀾亭からは縁側越しに松島湾のさざ波が見え、さらにその向こうには島々の姿を見ることができます。
昔はもちろんその姿はなかったのでしょうが、今は観光桟橋に寄せる遊覧船の姿も見えますね。
海に向かって左側を見れば福浦橋と福浦島が、右側を見れば雄島が見られます。
さて、最初にも書きましたが、観瀾亭は観光スポットであるだけではなくて、ひと休みしていただけるポイントでもあります。
さきほどの門をくぐると、最初に目に入るのは写真の「お品書き」です。抹茶とお菓子のセットを中心に、コーヒーや冷たい飲みものもあります。
伊達藩の歴代藩主と同じロケーションで、眺望を楽しみながらゆっくりした時間が過ごせるのが、観瀾亭の素敵なところです。
出していただいたのは、抹茶と紅かぼちゃのタルトのセット。こちらで一番人気の組み合わせだそうです。
このタルトは、松島海岸駅前にお店を構えている菓子工房 松田屋さんのもの。
パレス松洲をお祝いごとで利用されるお客さまにケーキをお申し付けいただいたときに、お願いしているお店です(おいしい、とお客さまには好評です)。
こちらで召し上がった方が、おいしかったので、ということでお店で買って帰られる、みたいなこともあるとか。
ほかにも、松島の地域のお菓子が用意されています。
お座敷に座って、お茶のセットを出してもらって。目を上げるとそこには、代々の伊達藩主が目にしたものと同じ松島の情景が広がっています。
おだやかな海と島々をながめながら、ゆったりとした時間をお過ごしください。
ご連絡先
- 観覧料
- 200円(松島博物館観覧料含む、飲みもの等別途)
- 営業時間
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- 4月~10月 8:30~17:00
- 11月~3月 8:30~16:30
歴史を味わいながら、ゆっくり眺めを楽しめるよ。
お茶もお菓子もおいしい!